全開ガール裏話2

全開がーる脚本の方から引用


全開ガール」:草太、演者の奥行き
2011/10/17 21:06

さて、10月クールのドラマもスタートし始め、全開だった夏も、黄昏の秋に。
全開ブログも、DVD&ブルーレイが発売されるまで、ひとまず終幕。最後に、草太への想いを綴りたいと思う。

錦戸亮さんの草太——その演技を誰もが絶賛した。その存在は、本作りを左右するほど大きかった。いや、大きくなっていったと言うのが正しい。
連ドラは生モノで、放送しながら自在に変化していく。チビ若葉をフル出場させたのも、1話の彼女の演技が面白かったからだし、借金取りを再登場させたのも、1話の演技のインパクトが強かったからだ。では、草太はどうだったろう。

錦戸さんの演技は元々定評がある。私もその意味で、錦戸さんの名がキャスティング候補にあがった時、「いいじゃないですか!錦戸さんがいい」と推した。が、前クールからの連投、かつ父親役続きで、かなり難しいだろうと内心諦めていた。
やって下さるという返事を若松プロデューサーから聞いた時は、「やった!」と思わず小躍り。皆で喜んだものだ。
そして期待通り、錦戸さんは顔合わせ&本読みの時から既に、草太らしいイイ人感を創出。以来、プロデューサーや監督は、そのナチュラルな演技を評価していた。だが、できる人ゆえに、監督らは、”もっと出してこい”と期待し、求めた。そしていつからか、皆が「凄い」を連発するようになり、その声が回を追うごとに大きくなり、「いやアイツはホントに凄い」と上気し興奮気味に言うようになっていった。
錦戸さんは、監督の要求に応えるだけではなく、本をしっかり読み込み、微細な心情変化を、自分で作り込んでくる。台詞の抑揚だけではなく、動きや所作、居ずまいまで。それをサラリとやりこなす。天性なのか、計算なのか。とにかく勘がいいようだ。
例えば軽めの演技をしていても、監督が「ここは心で泣いている」と言えば、次の瞬間、「あ、そうですね」とすぐに軌道修正できる。要求すれば”返してくる”、しかも巧みに。ゆえに監督陣は錦戸さんを演出するのが、面白くてたまらなかったようだ。

私が最初に唸らされたのは、#4の告白などの見せ場シーン――ではなく、#5の出前帰りの廊下〜エレベータシーンだ。
弁護士事務所で蔑まれ、住む世界が違うことを思い知らされた草太の心模様を、台詞ではなく、表情と手だけで魅せた。身体の筋(スジ)でもみせる。エレベータのボタンを押すのを躊躇うのは監督の指示だが、手の動きや、エレベータに入った瞬間の顔など、全部ご本人の作り込みらしい。#7の複雑な演技に至っては、放映後、他の仕事のPから「錦戸君旨い!なるほどの演技だった」と感嘆の声が届いたほど。CXの上の方からもこの回、「錦戸君いいですねー」と連絡を頂いた。
#8ラストにおいては、24時間テレビ出演でスケジュールがない中、きちんと入れこんだ演技で、驚かされた。思わず握った若葉の左手。その婚約指輪に痛みを感じ涙するカット、実は脚本には描かれていない。監督が草太の演技に引っ張られ、加えて演出したものだ。
#9ラスの表情も見事だった。演者の精神的にもそよ子にいきにくいだろう中、プロデューサーや監督と話し合い、しっかりその意図を汲んで、心情が伝わるよう演じきってくれたのは、感謝だ。
そういう微細な演技もいいが、泣きの演技がまた絶品だった。役に入るタイプなのだろう、ト書きにそう書かれていないシーンでも感情に任せ涙ぐむ。ドライ(カメラなしの打ち合わせ的なリハ。衣装に着替えてもいない)から泣いてしまうことも多々あったようだ。#10においては、監督が涙をおさえさせたほどで、よく見直すと、確かに草太は全シーン潤んだ眸をしている。

若手の男優で、これだけ泣きの演技や微細な表情を作り込める役者はいないと、みな惚れ込んだ。ラブコメという軽めの役であるのに、ペラっとしていなくて、立体的な演技をするというか。
様々な役を演じ分けられる”幅の広さ”、だけではなく、役の”奥行き”もある。お陰で私も草太への思い入れが強くなり、”描き甲斐”が増し、ラブコメの軽やかな演技以上の深い演技を追いかけていきたくなった。例えば、#7の”ズルい草太”は、錦戸さんでなかったらああは描かなかったろう。
草太が彼でよかったと思ったし、彼でなければならなかったと思う。

その錦戸さん自身は、草太は自分とはキャラ違いと言いつつ楽しくやれたようで、「いい人の役やらせてもらってよかった。楽しかった」と、事ある度におっしゃっていた。
実際、楽しかったのだろう、普段も笑顔をたやさず、飾らず、気配りのある印象を受けた。現場スタッフもみな、草太と共に錦戸さんに惚れまくりだったようだ。
ビー太郎に対しては、厳しさと愛情をもって接していたようで、制作発表の控え室といった、人に見えない所でもじゃれ合っていたし、遊ぶ時は遊んで、叱る時はしっかり叱る。撮影では助監督バリに、ビー太郎やル・佐藤のおやっさんに立ち位置やタイミング等をアドバイス。現場も助かったのでは?(笑)
本打ちでも現場でも心から愛された、草太だった。

もう1つ。草太の話ではないが、「ツブサニコイ
これはプロデューサーと監督が、劇中曲を作ったFace2Fakeさんに関ジャニの曲も作ってもらおうと試み、生み出されたものだ。(劇バンの作曲家が作曲するのは珍しい) ゆえにドラマとの一体感が強く、ご本人もとても気に入っているらしい。PVでは錦戸さんのアーティストとしての深みも感じられる。草太の気持ちを補完するシビレ曲なので、DVD&ブルーレイと共に是非。

最後に……
ツイッターで、こんな”全ガ”ファンのつぶやきを見つけた。
『感動で、目から鼻水、鼻から涙がとまらない』
その感動は、先回書いた通り、新垣さんの勲章でもあるが、錦戸さんの熱演なくしては語れないものだろう。皆さんがおっしゃる"キュン度"をここまであげてくれたのも、ラブコメに深みを与えてくれたのも、彼のキラースマイルと、演技の奥行きのお陰だと思う。またいつか、全く違うジャンルやシリアスな役などでもご一緒したいものだ。
錦戸亮さんという演者は、作り手が、もっともっと、その幅と奥行きを探りたくなる、そういう本物の役者であり、表現者だ、と思う。今後の活躍が、楽しみでならない。